20100508

十一話

家から廊下だけを抜き取る、名刺入れのように。
家が机になるような大きな人間のことを考える。
私は彼女とは(彼女だとすれば)セックスはできないだろう。
廊下のあった空洞に外の風が吹いている。
吹き込んできたビニール袋が、しばらく落ちていて、また吐き出されて消える。
私たちに恋愛感情は芽生えない。
彼女は(彼女だとすれば)私を小鳥のように見おろしているのだ。
小鳥とセックスをすることは、殺すことと同義である。
彼女の名刺の肩書きをぼくは盗み見たことがある。
彼女だとすれば、彼女は、女にしかできない職業の人だった。


蝶だった?蛾だった?そこが肝心なときだってあるそれが今なの