20100508

十二話

玄関の内鍵が、変なタイミングでカチッと鳴ることがある。
誰も来ていないのに私はドアをあけにいく。
眠ってでもないかぎり、私は意味もなくそうしつづける。
すると扇風機の首振りにさえ一喜一憂する過敏さがたくわえられて、しかも朝である。
あかるくなると寝られる人の気持ちが、最近よくわかるんですよ。
電話でだれかにそう話して、返事がなかったのはいつのことだろう。
電話は切れていた。はじめから掛かっていなかったかもしれない。
私の客はよく柿食う客だ、とつぶやきながら林檎を剥く。
このタイミングで例のカチッがくるとしたら本物だな。
そんな私のナイフは、林檎に刺さっている時よく光るナイフ。


あの日見た護謨人形の一団の眼だまの剥げたおまえになりたい