20100508

十六話

「お友達でしょう」と母は笑って聞き入れなかった。「待たせちゃ悪いわ」
でも何度も言うけどぼくに友達なんていないし、まして夜中の二時に訪ねてきたりはしない。
「パパがふざけてるんじゃないの? 出張なんて真っ赤な嘘でさ」

友達がいない。

だけどどうだろう。こんな遅い時間にわざわざぼくを訪ねてくれる人なら、もしかしてってことも。
「じゃあ着替えるから出てってよ」
必死で頼めば、友達になってくれるかもしれない。

そう思うと、階段に踏み出す右足は藤の花のようにゆらゆらふるえていた。



あなたには正装した子供に見えるサボテンが点々と門まで