20100508

十三話

あなたに渡したお金は、今夜のカレーの材料とたくさんの果物とビール、それに切らしてた無塩バターに換って冷蔵庫に納まった。お釣りはなかった。
あなたがくすねたのか、逆に足りない分を払ってくれたのかはわからない。
私にはそんな計算ができない。計算をするのはいつもあなたの役目だった。あなたが出してくれた答えに見合う計算式を、私はぼんやりと想像してみるだけだ。
その式にはいつも小さな鳥が一羽とまっていて、答えを鳥の声で鳴いている。
小鳥が飛び立ってしまわないかぎり、あなたの答えは、私の式にとどまり続けるだろう。
またそんな、予言のようなことを考えてしまう。玄関の灯を点けない夜は。


緑道に猫のすみつく町だけがふたりをいつもかるく無視した